なんで、なんで、なんでっっ!!
「ごめんね、練習に集中させてもらえるかな。」
「勿論です、柚木様!!」
なんで、あの人がここにいるのっ!?
「ありがとう、皆。また後でゆっくり話そうね。」
「はいっ!」
優しい笑顔と声で誤魔化されてるけど、噛み砕いて言うと・・・邪魔って事だよね。
それなのに柚木様親衛隊の女子達は誰一人不愉快な顔もせず屋上から姿を消した。
相変わらず上手にあしらってるなぁ・・・って、しまった!今の女子に混じってあたしも帰ればよかった!!
そう思った瞬間立ち上がったけど、時既に遅し。
「へぇ、俺に挨拶もせず帰るつもりだったのか?。」
「・・・ゆ、柚木センパ・・・イ」
「いい度胸だな。」
――― 逃げそびれたっ!!
蛇に睨まれた蛙みたいにその場で立ち尽くしていると、爽やかな笑みを浮かべたあの人が・・・ゆっくり近づいてきた。
「酷いね、折角君と二人きりになれるよう皆に帰って貰ったのに。」
――― 思ってもない事をっ!!
「それとも、何か期待してるのかな?」
――― してるわけないでしょっ!
言いたい事は山程あるのに、この人の前に出ると声が出ない。
多分、本来の柚木先輩の空気に・・・あたし自身が飲み込まれているから。
「・・・黙ったままじゃつまらないだろ。」
ため息をつきながら、柚木先輩が一歩前に踏み出したので自然と一歩後ろに下がる。
「ふーん・・・」
あ・・・もしかして、今、やっちゃいけない事した!?
「俺から逃げるなんて、随分と面白い事をするね。」
「い、いえ・・・逃げたつもりは・・・」
そう言いながらも柚木先輩が一歩近づくと、あたしの足は磁石の対極みたいに後ろに下がってしまう。
立ち止まろうと頭では思ってるけど、体は見えない恐怖から逃れるかのように逃げるばかり。
でも、ある程度距離が定められた屋上という場所でそんな事を繰り返していれば、いつかは壁に当たってしまう。
「あ・・・」
カシャンと音をたてて背中にフェンスが当たると、柚木先輩が優しい笑顔を浮かべながらあたしの両脇に手を伸ばして逃げ場を奪った。
「・・・残念、もう逃げ場はないよ。」
「・・・」
見えない恐怖にかられて、先輩の腕の檻から逃げようとしゃがみこんだけど、それよりも早く先輩の手があたしの腕を掴んだ。
「このゲームはお前の負けだって分かってるだろう?」
「ゲームなんてしてないっ!」
「お前の意見なんて聞いてない。」
ハッキリ言われた瞬間、体が・・・震えた。
この手を振り払えない自分が悔しい。
この人に逆らえない自分が、情けない。
悔しくて零れてしまいそうになる涙を堪えようと、先輩から顔をそらし唇を噛み締める。
「・・・」
皆の知っている柚木先輩なら優しく声をかけてくれるだろうけど、あたしの前にいる本当の先輩は・・・こんな時、声をかけたりしない。
だから、泣かない・・・泣いたりなんか、絶対にしない。
ギュッと両手をキツク握り締めると同時に、先輩の声が耳元で聞こえた。
「・・・ほら、ね。お前の負けだよ。」
「っ!」
せめて何か言い返そうと思った瞬間、頬に温かな物が触れ、頭が真っ白になった。
「・・・へ?」
「随分と間抜けな反応だな、。」
「・・・」
自然と頬に手を添えたままの体勢で、今日始めて柚木先輩の顔を正面から見た。
――― 今、何が起きたの?
「折角キスしてやったのに、面白くないな。」
「・・・は?」
「それとも、ちゃんとしたキスの方が良かったか?」
「・・・」
――― な、な、な、何だって!?
瞬時に顔が真っ赤になり、ずるずるとその場にしゃがみこむ。
「これはお前が負けた罰だよ。もし、次もお前が負けたらどうなるか、分かるかい?」
「・・・」
「・・・それは次のお楽しみにしようか。」
そう言ってくるりと踵を返した先輩は、入口近くにおいてあったフルートを手に取ると、何もなかったかのように綺麗な音色を奏でだした。
残されたのは、未だ状況を把握できないあたしだけ。
あの人の本当の姿を、誰かに言ってしまいたい。
でも、言えない。
だってあたしが言ってしまったら、次はどんなお仕置きをされるか分からない。
何でも話していた幼馴染にすら話せない。
あたしの、たったひとつの・・・秘密。
アラモードで初めて生柚木先輩を見た時には、小動物のように怯えていましたが、Sさんから漫画を借りて読んだら・・・面白いキャラだなぁと思いました。あ、面白いって言うのは書くのがって意味で。
という訳で、思いついたら即実行の風見(笑)
試しに書いてみました、黒柚木様。
・・・とはいえ、手元にある単行本が現在5巻だけという知識薄状態なので偽者チックなのはお許し下さい(苦笑)
未だにコルダのゲームやった事ないのに、何で4人分も話があるのやら?
その辺が私の趣味と好奇心で増えていくその他夢って感じでしょうかねぇ(笑)